PAGE TOP ▲

湘南発、しらすの沖漬け

2013年5月10日UP | headline


 生、茹でる、干す。それぞれに食感、風味、保存期間があり、それぞれの魅力がある「しらす」。中でも、その日のうちに食べなければならないという「生しらす」は保存期間が短い。この生の美味しさを「もっと多くの人へ、家庭へ」と、「神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会」(杉山 武会長)で昨年、生まれたのが日本初という「しらすの沖漬け」だ。湘南発の新たな珍味。平塚市内では今年から、しらす船曳網漁業者・丸八丸が取り扱いを始めている。

 4月ラストの日、ということで同協議会が「湘南しらすの日」と定めた4月30日。同日から同商品の加工・販売を開始した杉山会長(丸八丸代表)は、「だんだん食感が変わってくるから1週間楽しめる」と、沖漬けの魅力を語る。賞味期限は1週間程度。最初のうちはしらすの形を成していてプリプリとした食感、最後はたれに溶け込み、トロッとしたものになる。「ご飯にかけても、お酒のつまみにも」と推奨している。

 作り方はシンプル。しらす漁に出る、穫れたての活しらすをたれに漬ける、3日間寝かせる、というもの。特製のたれは、鎌倉市内で料理教室「鎌倉ダイニング」を主宰し、農林水産省が6次産業化の実践者等に任命する「ボランタリー・プランナー」でもある矢野ふき子さんと、同協議会の共同で開発された。材料は醤油、酒、みりんのみ。「混合比率に苦心した」と振り返る矢野さん。「普通は1日しかもたない生しらすを1週間もたすため、菌を繁殖させない比率での配合。塩分濃度、糖分濃度をバランスよく。かつ味を求める。何度も船上で試し、改良を繰り返しました。手間ひまかけて、妥協はしなかった」と言う。そしてもうひとつ妥協しないのは、「沖で漬ける」という点。
 なぜ沖か。理由は、保存用の氷や水から余計な水分を吸わないぶん、長持ちするという。さらには味。たれの染み込みがよく、味が全然違うのだという。常に求めるのは美味しさ――。その質を維持するための、「湘南しらすの沖漬け六か条」という基準も作られた。内容は、「しらす漁師が活しらすを沖で特製だれに漬けていること」や「活しらすが一度も氷や水に触れずに特製だれに漬けられていること」、「無添加であること」など。こういった厳しい条件をクリアしないと、「湘南しらすの沖漬け」としては認められないのである。

 だが手間でも、沖漬けを作る。「やっぱ漁師としてはさ、地元の名産である魚を食べてもらいたいんだよね」と杉山会長。沖で漬けながら展望を語る。「この沖漬けは、より多くの人にしらすの美味しさを知ってもらうための新商品として期待している。将来的には、各家庭のお膳にいつものってるような存在になってほしい」。湘南発の新たな名産品。今後、どう成長していくか。 (丸八丸☎22-7260)