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着物を愛する日本人の心 伝統の技術“洗い張り

2011年1月21日UP | 2011年, Top



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次から次へと「伸子」を取り付けていく5代目の八木一夫さん。手先を見ず、感覚のみ
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職人の技を受け継ぐ6代目の八木賢一さん
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仕上げに刷毛で「フノリ」を手際よく引く。どの作業にも職人の技がうかがえる


 洗い張りという作業。着物を反物に戻して洗い、元の美しい生地へとよみがえらせる伝統的な技術がある。昭和の初期までは家庭でもされていた「着物を洗う」仕事。今日、和服人口は減り必然的にその需要も減少した。が、全くないわけではない。但し近代化に伴い、請け負う業者の大多数が機械を使用して作業を行う。しかし平塚には今も昔ながらの技術で着物を洗う職人がいる。受け継がれてきた職人の技がある。

 平塚市内で店舗を構えてから99年が経つ老舗「だるまや京染本店」は明石町にある。家伝によると、初代が江戸時代末期に江戸で着物職人を始め、平塚に移ってきた3代目が染物や洗い張りも始めたという。現在は5代目と6代目で、着物や小物など和服全般を扱う呉服屋を営んでいる。染物は環境的な問題があるため辞めざるを得なかったが、洗い張りは今もなお、昔のままの手法で作業を行っている。

 洗い張りは着物の縫い糸を一度全て解き、端縫いをして一枚の反物に戻すことから始まる。そして洗浄が行われ、乾燥。次にしわを伸ばしてフノリ(海藻が原料の天然糊)を引き、乾燥させたら最後の仕上げが行われる。この一連の作業の中、「だるまや」でとりわけ職人技術が光るのが、しわを伸ばす「伸子(しんし)張り」という作業。この伸子張りを行っている業者は県内でもほとんどいないという。

 竹ひごの両端に針がついてできている「伸子」を反物の端と端に刺し、竹のしなりによってしわを伸ばすのが「伸子張り」。伸子の束を片手に握りながら約2㎝の間隔で次々に取り付けていく。反物の下で作業するため見えているわけではない。だがその一本一本は正確に刺さっていく。5代目の八木一夫さん(64)は「不思議だねえ。なぜかちゃんと出てくるんだよなあ」と手の感覚のみ。職人の技がここにある。

 そして次世代へ。同じ作業を同様にこなしているのは6代目の八木賢一さん(28)。早稲田大学を卒業後、大手電話会社で働いていたが、5代目が還暦を迎えたときにあっさり辞めた。「伝統技術を残すということにやりがいを感じています」と6代目。古き良き職人の技は確実に受け継がれていく。洗い張りという技術。平塚からはまだなくなることはない。