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自分の生き様が作品に出る
平塚市の和傘職人・杉崎英紀さん

2018年8月20日UP | headline, Top

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 平塚市で、国産の材料を用い和傘作りの全ての工程を一人で行う杉崎英紀さん(49)。県内では現在一人で、全国的にも数が減る中、日本の伝統を残したいと9年前に公務員から転身した。その魅力を伝えようと活動の幅を広げる中、今月22日から始まるひらつか障がい者福祉ショップ「ありがとう」特別エキシビション「アート×ハート展vol.2」にも協力する。縁のなかった世界に飛び込んだ杉崎さんの思いを伺った。

 和傘と出会ったのは、石川県の金沢だった。小田原市出身で大学卒業後は地元の市役所に就職。しかし、自由に意見を言いづらい環境のため転職を模索するうち、30歳を目前にした頃、組織で働くよりも「自分で何かやってみよう」との思いが高まってきたという。そこで、何を生業とするかを探すため仕事の合間に各地を訪れた。
 旅の途中金沢で、以前から興味のあった和傘の店へ立ち寄った。職人の手作業による逸品に心を動かされ、衝動買いをした。「弟子は取りたくない、自分の代で潰れてもしょうがない」と言いつつも素晴らしい技術を持つその人の存在が心に残り、年に一度は店を訪れていた。作り手の高齢化と後継者不足で、いつかは途絶えてしまうかもしれないと聞くうち「なくしてはいけない、人がいないのなら自分がやってみようか」と杉崎さんは考えるようになった。
 そこで、製法を学ぶ所を探して産地を回り、大分県中津市で和傘作りを継承する有志の会を見つけて何度も頼み込んだ。承諾をもらったところで市役所を退職し、1年半修行した。その後当時住んでいた茅ヶ崎で「湘南和傘 英遊」を立ち上げ。昨年、平塚市に工房を開いた。

円のキャンバス
 竹を細く割いた骨を大分から取り寄せ、組み上げて富山県の五箇山和紙を貼り合わせる。和紙には油を引き、最後に骨の上だけ漆を塗る。たたむと雨に濡れた面が中に折り込まれる仕組みで、そうした気遣いに「日本人らしさ」を感じると言う。作品は、傘を「円のキャンバス」と捉え制約は設けない。だから、伝統的な蛇の目模様から無地と柄模様を組み合わせたもの、さらにはイラストレーターによる絵が描かれているものなど様々な作風に富む。同じものは作らない。そこには「作り手の人となりや生き様が出てしかるべきでは」と語る。

広がる活動
 近年では和傘の良さを広めたいと、製作・販売に加え、イベントの演出も手掛ける。先月には大手町で和傘によるイルミネーションイベントに参加した。また今年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の和傘製作指導を担当するなど、活躍の場は広がっている。
 そして、今月開催される福祉作業所で働く障がい者の作品を展示する「アート×ハート展」にも協力。和傘をモチーフにしたフレームを作り、それに絵を貼って作品に仕上げていく。彼らの絵には、自分の発想にないものが出るといい「僕の方が勉強しています」とにこやかに話す。
 公務員時代と比べれば、経済的には苦しい。それでも、自分の作ったものを手に取った人が「こういうのが欲しくて来たんだ」と言い、大切に使ってくれることに喜びを感じている。これからも伝統を守り、出会う人から力をもらいながら作り続ける。

アート×ハート展vol.2
8月22日(水)~31日(金)
11時~17時(最終日は15時まで)
元麻布ギャラリー平塚(平塚市明石町1−1)

☎︎090-8340-3475

http://shonanwagasa.com

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【写真TOP】
作品を持つ杉崎さん。この傘には何色ものかがり糸を施してある
【写真下】
製作中の作品。竹の骨を糸で繋ぎ合わせる/和傘ランプシェード作りのワークショップも随時開催/神社に展示した色とりどりの作品(杉崎さん提供)