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大磯に残る澤田美喜氏の業績
児童養護施設エリザベス・サンダース・ホームが創立70周年

2018年5月19日UP | headline, Top

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 JR大磯駅前の緑深い森の中にたたずむ児童養護施設エリザベス・サンダース・ホームは、戦後間もなく故澤田美喜氏が創立した。このホームが今年70周年を、氏の蒐集品などを展示する澤田美喜記念館が30周年を迎え、今月13日に記念の集いが行われた。戦後70年以上が経ち社会の状況が変化する中でホームの必要性は変わってきたものの、子どもが自立できるよう育て上げるという役割は同じという。設立された経緯を振り返ると共に、ホームの昔と今について話を聞いた。

 澤田美喜氏は、三菱財閥の創始者岩崎弥太郎の孫、三代目の当主岩崎久弥の長女として1901年に生まれた。聖書と出会いキリスト教への信仰を深め、外交官の澤田廉三氏と結婚後は長く海外で生活した。
 終戦後、駐留軍の兵士と日本女性との間に生まれた混血孤児たちを救済するための施設を作ろうと決意。自らが少女時代に療養した大磯の岩崎家別荘が、戦後の財閥解体で財産税として物納していたものを苦労して買い戻し、1948年乳児院エリザベス・サンダース・ホームを創立した。学齢期になると敷地内に聖ステパノ学園小学校、後に同中学校を設立し、1980年に亡くなるまで子どもたちの養育に人生を捧げた。

今も卒園生が集まる
 これまでに2,000人以上の子どもが暮らしたホーム。13日に行われた記念の集いには、施設の関係者や地域の人たちと共に卒園したOBも約50人が参加した。埼玉県に住むOB会会長の森 博さん(62)は今も澤田さんのことを「ママちゃま」と呼ぶ。「生意気盛りの頃は厳しく怒られた」と振り返りつつ、卒園後も会いに来ると「頑張ってる?」と声をかけてくれたと言う。また森さんと同期で名古屋から来た女性(62)は澤田さんとの思い出を語り「普通は個性が目立つと隠さないと、と思うけれど、そんな必要はないということを理屈じゃなく肌で受け取った。ここで育って本当によかった」と笑みを見せた。
 現在は、様々な事情で親と一緒に生活することが困難な家庭の子どもたちのための児童養護施設となっている同ホーム。89人の定員に対し2〜18歳の80人前後が暮らしている。山田和信施設長は、子どもたちにとってホームの形が自分の家庭観のモデルになることから「当たり前の普遍的な家庭の姿を伝えたい。ご家庭の皆さんと同じように子育てするつもりで関わっている」と話し、決して特別な場所ではないと知ってほしいという。

もう一つの事業
 運営する社会福祉法人では、ホームが澤田さんの戦後の事業である一方、戦前の事業が隠れキリシタンの遺物蒐集であると捉えている。敷地内の澤田美喜記念館は、マリア像が隠された観音像や十字架紋の入った椀など自ら集めた約870点を所蔵し一部を展示する。同館の西田恵子館長によれば、こうした品々に祈ることが資金面や偏見などホーム運営で困難に直面した時に心の支えになっていたという。
 ホームについての記録も展示するこの記念館は、一般に公開されている。また聖ステパノ学園「海の見えるホール」はコンサートや講演会の会場として利用でき、地域にも開かれている。
 「情熱と行動力がすごい」(卒園した女性)という澤田さん。その蒔いた種は花を付け、大磯の地で今も咲き続ける。

◇澤田美喜記念館
入館料一般500円、高大生と65歳以上400円、中学生以下無料。10時〜16時、月曜休館(祝日は開館、その場合は翌火曜休館)。問い合わせ=同館☎︎61−4888


えとき=
【写真TOP】緑に包まれたエリザベス・サンダース・ホーム
【写真下】澤田美喜氏(澤田美喜記念館提供)/記念館には長崎や熊本を回って集めた品が並ぶ/OB会会長の森さん