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Jリーグ開幕直前! 曺貴裁監督スペシャルインタビュー

2018年2月23日UP | headline, Top

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 いよいよ今月24日、J1リーグ2018シーズンが開幕する。クラブ創設50周年の節目の年にトップリーグに挑む湘南ベルマーレ。その指揮官は今何を思うのか。今回は湘南ケーブルネットワークとの共同企画で、サポーターと同様に期待に満ち溢れている曺貴裁監督のインタビューを敢行。サポーターならずとも必見の曺ワールドを存分に味わってほしい


この記事は湘南ケーブルテレビ局(SCN)との共同企画により制作しました。湘南チャンネル(CATV002ch)で放送中の「情報カフェ! 湘南館ワイド」では、曺監督のプライベートに迫った特別企画をお送りします。今回の番組は2/26(月)まで放送中(12時~12時40分、19時~19時40分ほか)。

── 本日は宜しくお願いします。まずは現在のチームの状態はいかがでしょうか?
そうですね、今年は4回目の昇格だとか色々言われますけれども新鮮な気持ちで、J1で結果を残すというか、やっぱり自分たちのサッカーを追い求めながらもやるべきことをやっていくとずっと言ってきているので、新戦力も短い練習期間の中でしっかりチームの中に入ろうと努力してくれていますし、既存の選手もよく頑張ってくれていると思います。

── サポーターのみなさんの期待度も高いかと思いますが?
J1に上がったからといって期待度が上がるんですかね(笑)でもハツラツとしたサッカーを観たいというサポーターの方は多いと思うのでその期待には応えたいなと思います。

── キャンプ(スペイン・マラガ)での手応えはいかがでしたか?
時差があったり、移動が大変だったりしましたが、普段当たらないチームと試合をすることで連携も深まりますし、体力的にも戦術的にも色々な成果が出せたんじゃないかと思っています。

── 今の段階で去年までとここが違うな、ここが変わったな、と感じる部分はありますか?
自分たちで自分たちの状況を変えなきゃいけないという、自立心みたいなものは毎年高まっていると感じます。

── 新体制発表会では「ALIVE」を今年のチームスローガンに掲げました。これの意味するところを改めて教えていただけますか?
「Dead or Alive」じゃないけれど、「ALIVE」のイメージは最後死にそうになるけど死なないというか、ギリギリのところでも生きていく姿勢を見せるみたいな。サッカーで言えばラインを割りそうなボールでもしっかり自分たちのものにしていくとか、最後まで足を止めないとか、そういうところが大事で。そこは折につけ選手に伝えるようにしています。

── このスローガン「ALIVE」の中で「湘南スタイルの真髄」という言葉が出てきましたが、今、監督が考える真髄とはどんなものなのか、またその理由について教えてください。
僕が湘南のこと全部わかっているかわからないですけれど……ただ、とにかく楽しまなきゃいけないというか。仕事だから嫌々やるのか、工夫して楽しんでやるのかってどの仕事でもあることだと思いますが、そういう中で本当に仕事に行きたいなという気持ちに選手をさせることも大事だと思っていて。だからサッカーをやっていて自分たちが「やれてるな」とか「成長できているな」という手応えを感じられる、それが勝利につながるというのが真髄だと思っています。どんなサッカーをやるかというのはその次にくることで、選手が満足感を得たり、毎日充実していたり、そういうことが真髄というか中心になっているんじゃないかという気がします。

── 世間でいわれる「湘南スタイル」について、何か気持ちの変化はありますか?
いや、特に1年目から気持ちの変化はないですけど、やっぱり勝負に対してスタイルを出しても負けてばかりじゃ選手は成長を感じられないだろうし。逆に勝つだけでいいのかというとそんなこともない。そのギリギリのところでどっちにどれだけ針を振れるかが大事だというのは最近になってちょっとわかってくるようになりました。全部100%でいくのは難しいのでその時々のチームの状態でどっちに針を振っていくのかが大事だと思います。

── 湘南スタイル、というと「縦に速いサッカー」だったり「攻守の切り替えが速い」だったりと視覚的にわかりやすい部分があったと思います。ただメンバーやカテゴリが変化する中で意味するところが変化したように感じますがいかがでしょうか?
速いサッカーが湘南スタイルだなんて言ったことは多分ないんです。ただ、点を取るためには速く攻めた方がいいに決まっていて。コーナーの守備のカウンターから3人、4人と人数をかけて攻め込む、それが湘南スタイルと言われていますが、サッカーにおいては当たり前のこと。「そのことが面白いと思わないとサッカー選手じゃないよ」っていう話をしているだけですね。

── それが監督のサッカー観ということでしょうか?
というよりサッカーってそういうものだから。パスを何本回しても、(ボール)支配率が9割になっても点数は取れない。ゴールを何点獲ったかを競うスポーツなので。サッカーはとかく戦術のことが語られるけど本質はゴールに入れるかどうか。それをただ単に実践したら速いサッカーになった。逆にそれで苦しんだ部分もありますよ。いつも縦に速くいかなきゃいけないというか、選手もスタジアムの空気を感じてプレーしている部分もあるから。その段階も抜けなきゃいけないなと思います。特別なものじゃない、ごく当たり前のこととして。

── 「ALIVE」の中で、「見ている人と究極に感動を分かち合えるフットボールを目指します。」という部分もあるのですが、湘南のサッカーで誰もが共有できる感動のポイントはどこにあると思いますか?
意味もなく、お客さんにアピールするために走っても、多分人は感動しないと思うんですよ。チームが1つのボールを追いかけて、勝つために無心になって無欲になって、ほとばしるエネルギーをそのボールに、勝負にそそぐことで、人の心は動くと思う。僕からしたらお客さんのためにやるんだけどお客さんのためにやってはいけない。自分たちに酔うこともしないし、自分たちが素晴らしいと過信してしまうこともしない。毎日謙虚に相手を、レフェリーを、全てのものをリスペクトして勝負にこだわってフットボールをすることで究極の感動を分かち合えると思っているので。真剣勝負を楽しんでいる姿を見せたい、という風に思います。

── 昨年頃から結果を追い求めることに対する心境の変化が感じられるように思います。例えば以前はリーグ戦で首位にいるとしても目の前の試合のこと以上はあまり言わなかったのが、優勝や昇格などの長期的な目標に言及するようになったと感じます。このあたりはいかがでしょうか?
変わってきたのか自分では判断つかないですけれど……ただ1つ言えるのは、1−0の時に2点目とりにいけっていう指示は簡単ですけれど、選手が「1点でも絶対守れる(勝ちきれる)」と感じた気持ちには絶対勝てないと思います。だから、選手が本当にどう思っているかを僕が知らない限り無味無臭な指示しかできないと感じていて。そういうところで言うと、勝負に勝つためには何かを削ぎ落として、何かだけで守らなきゃいけないとき、何かだけで攻めなきゃいけないときは当然ある。状況が違うわけだからそれを一緒くたにできないなっていうのは、去年の途中ぐらいから思うようになりました。僕はどちらかといえば理想主義者なんで。理想を追い求めることが一番大事だと今でも思っているけど、現実を乗り越えてはじめて理想があるわけであって、現実を乗り越える力もないのに理想を語っていたらそれは単なる絵空事だなと、その感じは去年ずっと思っていました。

── 例えば先ほどのサッカーを楽しむ、という部分が理想でしょうか?
いや、サッカーを楽しむというのは理想ではなく当たり前のことです。

── それは前提として。
はい。パスを10本相手に触らせないで(通して)クロスから点を取るというのは理想かもしれない。でもそういうわけにいかないから面白い。全部理屈で抑えようとしているけど人生そんなもんじゃない。だからエネルギーが必要だと思っていて。

── そのエネルギーがあるところに感動が生まれるんですね。先ほどの質問、昨年途中ぐらいからというお話でしたけれど、今年で監督としては7年目。これは時間がかかった?
周りには色々言われますけれど僕は7年目という意識は全くないです。だから開き直ってます、逆に(笑)僕の持っている100%をこのチームにそそぐっていうのは約束できますけれど、10年後20年後にチームがどうなっているかをこんな無力な自分が語ることはできないなと去年思いました。そう思うと楽しくなりました(笑)でもそれが未来に繋がるんだとも思っていて。今自分で変えられる現実を変えていかない限り何も生まれない。僕がそういう心境だと皆さんは想像していないと思いますが。

── 「そういう心境」というと?
「7年目だから今までの経験を生かして今年はこういう風にやろう」とか一切そんなことは思っていないです。

── 今年は今年、ということですか?
僕自身が湘南の歴史のようなところに囚われていない。その責任を負ったってやれることは変わらない。言葉にすると熱がこもってないように聞こえるかもしれないですけれど、事実なんですよね。選手には僕が持っているものを100%そそぐけど、それが湘南のためになるかどうかなんてわからない。だからそこに頭を巡らせてもしょうがないなって。全部の人が良くなるように振る舞うなんて無理だと思いますし。

── そのあたりが変わった、気づいた、ということでしょうか?
変わったというか「そんなもんだよな、俺は」という。自虐では全くないですよ。純粋にサッカーを楽しんで、自分がやれることを100%このチームにそそごうと。大事なのは「このチームの監督は俺だ」ということ。僕の一挙手一投足がチームに出るんで、純粋な気持ちを選手にぶつけるのが一番いいと思っている。今まで「絶対こうしなきゃいけない」という義務感とか使命感が僕のなかでも強くて。それが選手の自由度を奪ってしまったというのは実際の反省でもあるんで。

── より純度が上がった。みたいな感じでしょうか?
どうだろうな……その、いい言葉を当てはめようとは思わないけど(笑)今年、単純に楽しいですよ!

── 今までと違う楽しさですか?
全然違う。例えば僕があなたと出会ったとして、昔だったらあなたが3年後にこうなってほしいなと思って付き合ってるけど、(今は)あなたと出会った瞬間にもういなくなると思っている。だから今、出会ったこの瞬間に僕があなたに何を伝えられて、あなたが何を感じるかによって、チームっていうのは生きるか死ぬか決まってくる。だから「ALIVE」なんですよ。理想とかどうしたいとか語るよりも、この1日、この瞬間を大事にするしかないなと思ったんですよ。だからこそそれらを許容して監督を引き受けないと私利私欲とか自分が勝ちたいがために周りを蹴落としていくとかそういう発想にしかならないんで。僕とあなたが知り合って3日で違う選択をしてもいいんです。次に向かえるエネルギーを植え付けられたら3日で十分じゃないですか。だから選手に真剣に言っているだけで。

── その時々の充実感ということですかね。
そう。「もうここにいてもしょうがない」「もう学ぶことはないな」と思ってしまったら、お互いに不幸じゃないですか。今までもうちょっと時間に対するスタンスが長かったんですよ。サッカーチームもそうだし日本の職場もそうかな、“石の上にも3年”じゃないですけれど、「君、そんなこと言うけど新入社員ってそんなもんなんだから3年我慢しなさい」とかね。今はもうそんな時代じゃない。だから人情が大事なんですよ。逆の発想で。そんな時代じゃないからこそ、3日でちゃんと教えなきゃいけないんです。今年入って来た(新井)光とか(松田)天馬とか、「湘南に入ってこれから勉強します」と口では言うけれど、ある意味エゴイストに違うことも考えている。でもそれでいいんですよ。

── 具体的にそういう風に思うきっかけとなった出来事とかありますか?
何か1つ(の出来事)とかじゃなくてここ最近の積み重ねですね。なんていうのかな……僕は純粋な部分もあるけど天邪鬼なところがあるから、「曺さんってどうせこうでしょ? こういうタイプでしょ?」って言われたらすごい嫌。1人でいても全然平気なのに、「1人でいるのキライでしょ」って言われる。なんとなくキャラ立ちしてるから1人で海を歩いてるのは絶対に似合わないと思われているじゃないですか(笑)いつも熱く選手とぶつかって、クラブの将来のために、とか言われるけど、僕そんなに聖人君子じゃないんで。ぼーっと海外ドラマとか見ることもあるし。そういう自分に気づいたうえで、それがなんでここのチームの監督なんだといったら、まず1つは「クラブから求められている」。その中で僕がやれることはなんなのかと考えた時にこのチームをもっと強くしたいな、と思ってるし、このチームをなんとかしたいと思う。だから結論は「俺がエンジョイしないとダメだな」って。100周ぐらい回った結論は俺がサッカーを楽しんで、試合を楽しむ姿勢がないと選手は伸びないだろうなと。だって他のチームでのいいプレーが湘南じゃいいプレーとは限らないからサッカーは面白い。だから僕は湘南に唯一無二のスタイルがあるとは思ってないけど「湘南じゃん!」っていうのがもっと出てこないといけないと思っています。「だってここ湘南でしょ?」っていう。川崎でも横浜でも鹿島でもないんですよ。その言葉をちゃんと深めたい。

── 考え方はシンプルになっている?それとも複雑になっている?
めちゃめちゃ複雑になってます。だけど僕は基本的にはピッチの上のことしかできないですよね。だから、選手はいい意味で僕の力を利用すればいいんですよ。利用しながら自分の力をつけていけばいいだけなんです。

── 2年ぶりにJ1に復帰してのシーズンとなりますが目指す戦い方を改めて教えていただけますか?
まあ言ったけどね(笑)

── そこを要約してもらえると(笑)
その質問、すごい答えにくいんですけど……、「自分たちの良さを出しながら相手の良さを消して一回り強くなった湘南を見せる、そのために走ることが大事です」と言ったらそれが世の中にでるじゃないですか。一方であっているけど、一方で間違っているってわかってるんで……だから本当のこと言えないんですよ、今。隠してるわけじゃなくて僕自身がどうなるか期待しているだけなんでそれを言葉に出すのは難しいんですよ。マスコミ泣かせだけど(笑)だから期待してスタジアムに来て「見てください」という感じです。「今年やりたいサッカーってこうだったんだ」というのが皆さんに伝わるように努力する。それだけはお約束します。サッカーを語るの嫌なんですよ僕。そんなもんじゃないって思ったんです。僕らがスタイルを作ったら、別のチームがそれ以上のものを作ってくる。サッカーっていたちごっこなんですよ。でもそれを繰り返していると本質がブレてくる。だから僕は言葉が必要ないと思ってるんです。それなのに言葉にしたら嘘っぽいじゃないですか。「そんなこと求めてないから適当に」っていうなら言いますよ(笑)でも、僕自身はこのチームに期待感があるから、それをうまく使ってください。「期待感を持った曺監督」みたいな(笑)

── わかりました(笑)最後にサポーターのみなさんにメッセージをお願いします。
応援してもらえるというのは幸せなことです。ただ、僕たちは「ALIVE」というスローガンの元で1年間自分たちが没頭している姿を皆さんにピッチで見せることは約束します。だから選手達や湘南ベルマーレというチームを支えてもらえると嬉しいです。10人になっても9人になっても最後まで勝負を諦めないでゴールを目指し、勝利を貪欲に追いかける姿を選手達と一緒に作っていきたいと思ってますので、新しい湘南にぜひ期待してもらえればと思います。あと、本が2冊出たので暇な時に書店に行って買ってください(笑)
ありがとうございました(笑)

取材協力:ホテルサンライフガーデン