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人の縁から生まれたCD
大磯在住のアーティストとプロデューサーが共に作り上げた響き

2018年1月8日UP | headline, Top

0105 1面1  大磯町に住むアーティスト・イチオンによる1枚のCDアルバムが昨年出来上がった。この作品『銀のしずく降る降るまわりに』は、自分たちの欲しい響きを愚直に追い求めてアイヌの音楽にたどり着いたイチオンの2人が、近くに住む1人の男性と知り合ったことをきっかけに世に出ることになった。出会いを大切にしてCDという形に込めた3人の思いを聞いてみた。

 アルバムを再生すると、打楽器の音をベースに呪文にも思えるような控えめの女性ボーカルが流れてくる。呪術的なところもあれば民謡に近い部分もあり、そうかと思えば時折電子音が混じるといった不思議な曲が続く。しかし飽きずに何度も聴いていると耳に残り、そのうちCDを聴いていなくても頭の中で流れ出す。そうした「いつまでも聴いていられる曲」を目指してこのアルバムは作られた。

アイヌ文化と出会う
 イチオンは、楽器演奏と音の電子的加工を担当するアライシアキラさんと、妻でボーカルのキラライラさんによるユニット。2007年までロックバンドにいたものの、演奏する曲に違和感を感じていたアライシさんは、自分が自然に作れるような音楽を探したいと思うようになった。
 そこで、日本の音楽のルーツを探ってみようと各地の民謡や祭りの歌などのCDを聴き始めた。その中でアイヌの音楽を知り、全く違う音律の感覚に「これだ!と思った」というアライシさん。アイヌの曲を作りたいと考え始めた。
 それからキラさんと共にアイヌ文化への理解を深め、その土地の空気を知ることが大事と考えて北海道を3度訪れた。そこで「場が持つ空気感やエナジーを一杯歌に入れよう」と、神話にちなんだ洞爺湖や海辺といった野外でキラさんがアカペラで歌った声を録音。それにアライシさんが後から音を加工して曲を作り上げた。

CD化へ
 しかし当時、2人はこれらの曲をCDとして発売するつもりはなかったという。それを世に出そうと働きかけたのが磯田秀人さん。レコード会社でディレクターを務めるなどこれまで多くの作品制作に携わり、現在町内でCD制作などを行う事務所(株式会社ピンポイント)を経営している。その磯田さんのブログを興味深く読んでいたキラさんがある時、磯田さんが大磯在住と知って3人が顔を合わせるようになった。
 そして親しくなる中で2人の作ったデモ音源を渡された磯田さん。元々音楽というより音響や響きへの関心が強く、同じように響きにこだわるイチオンの曲を何度も聴くうち「深みにはまった」と言い、CD化を2人に持ちかけた。
 アライシさんは、音楽配信サービスが主流となっている今、CDを出しても売れるのか、自分たちの作りたいものを買ってもらえるのか不安もあったという。だが、キラさんの「形にした方が物としての力が生まれるのでは」という声を受けて心が決まった。
 消えつつあるアイヌ語の響きを残したいというアライシさんの思い。その響きに今のサウンドで味付けすることで、アイヌに興味のない人にも広く聴いてもらいたいという磯田さんの思い。親子ほどに年の違う2人の思いが重なり合って13曲入りのアルバムが完成、昨年8月に発売された。
 その後、磯田さんが町内の飲食店やギャラリーなどを回ってCDを売り込み、現在は6店で販売されている。10月には大磯高麗山芸術祭でミニライブを行い、大磯に住んで8年あまりとなるキラさんは「地元の人が楽しんで聴いてくれて、初めて大磯の一員になれたように実感しました」と振り返った。今年も都内や関西など3つのステージに出演することが決まっており、2人は「大磯でもライブができたら」と願っている。

◇販売店などの問い合わせ=(株)ピンポイント☎︎26−6671

【写真TOP】イチオンの2人。アライシさん(左)とキラさん
【写真下】プロデュースした磯田さん/アルバムジャケット