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竹芸の新たな表現を追い求めて
大磯の竹芸作家、藤塚松星(ふじつかしょうせい)さんが文部科学大臣賞

2017年9月8日UP | headline, Top

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 大磯町在住の藤塚松星さん(68)がこのほど、国内トップレベルの木工芸・竹芸作家が多く出品する「第16回伝統工芸木竹展」で最高賞となる「文部科学大臣賞」を受賞した。同展での最高賞はこれで2度目など公募展で入賞多数、海外でも高い評価を受けているが、それに満足することなくさらに新しいことをやりたいと先を見据えている。

 作家名に「星」の字が入る藤塚さん。高校卒業後はサラリーマンとなったものの、小学生の頃からの星好きが高じ、天体観察の時間を確保するため時間が自由になる職業につく必要があると考えた。そこで、手に職をつけようと決意。23歳の時、縁あって竹芸作家のもとに弟子入りした。
 最初は当時注文が多かった竹のランプシェードを作るのを手伝いつつ、師匠が公募展のために作品を作る様子を見てその手法を必死に学んだ。その中で、同じ製品を1ヶ月に100個200個作る職人として関わるよりも、自分がデザインしたこの世に一つしかない物を生み出す作家としての生き方を目指すことを決めた。

独創的な手法を生み出す
 そうは言っても、もちろん簡単なことではない。自分で考えた作品なのに、人のまねだと言われたこともある。そう言われないためには、常に「人がやっていない新しいことをやろう」と必死に考えているという。そのアイデアを探すため、竹芸はもちろん陶芸など他の伝統工芸の作品も数多く見て感性を磨き、時には創作のヒントをもらった。
 そして、今回の受賞作・「彩変化花籃『日月』(さいへんげはなかごじつげつ)」にも使われている「彩変化」など独自の手法を作り出した。これは、通常断面が四角の竹ひごを三角に削り、二色に染めて使うもので、色の変化や陰影が味わえる。また、一本の竹ひごを半分に染め分けて出来上がりが左右非対称になるようなやり方に挑戦したり、従来なかった紫色の作品を作ったりもした。発表した時は、アイデアの斬新さにバッシングを受けたこともあったが「新しいものが受け入れられるには時間がかかる。いいものならいつかは評価される」と信じて、めげずに信念を持って作り続けた。
 そうして気づけば入門以来45年。これまでに日本伝統工芸展など国内の大きな公募展で多くの賞を受賞してきた。また十数年前からは、竹芸がアートとして注目されているアメリカなど海外のギャラリーや美術館にも出品。現在は、ニューヨークのメトロポリタン美術館での展覧会でも作品が展示されるなど、高い評価を得ている。

続ける挑戦
 しかし、60代後半となり体力や集中力の衰えを感じることも。まだまだずっと作品を作り続けたいとは思うものの、あと10年もすれば、さらに体力が落ち創作のエネルギーが弱まるかもしれない。そこで70歳になる2年先を見据え、「それまでにどれだけいい仕事ができるかが勝負。もう一つ新しいことをやりたい」と藤塚さんは考えている。
 そのチャレンジの種が詰まったのが、作業場にある棚の引き出し。中には、作品のイメージや簡単なデッサンを思いついた時に描きつけたメモの束が入っていて、それを眺めながら次作のデザインを思い描く。そうして頭の中に出来上がったイメージを実際に形にしたらどうなるのか、早く見てみたいという思いが、新たな作品作りの原動力になっているという。

 伝統工芸の分野では、後継者がどんどん減少している。藤塚さんも、師匠から教わったことや身につけた技術を誰かに伝えたいという思いはあるが、自身に余裕がなく師匠が弟子の生活を経済的に支える昔のような徒弟関係を作ることは難しいという。それでも、3年後の東京オリンピック・パラリンピックを機にアートとしての竹芸をさらに世界へ発信し、ファンが増えれば、後継者育成につながるかもしれないと期待している。

 

【写真TOP】作業場での藤塚さん
【写真下】今回の受賞作「彩変化花籃『日月』(さいへんげはなかごじつげつ)」/文様が左右非対称の「緋襷文花籠(ひだすきもんはなかご)」/メモの束にはたくさんのアイデアが