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よみがえる旧吉田邸:vol.2 書斎

2017年4月14日UP | よみがえる旧吉田邸, コラム

DSC_9062 応接間である楓の間から奥の階段を登った先にあるのが書斎だ。楓の間がパブリックな場だとすれば書斎はプライベートな空間。限られた人間しか入れなかったこともあり、それだけにわからないこともたくさんある。
 有名なのはダイヤルのない首相官邸直通の黒電話。部屋の南側に位置する掘りごたつ付近にあったガラス製の地袋に置かれていたそうだが、実際に官邸のどこに繋がっていたかやどの程度使用されていたかなどは不明だという。
 吉田茂の残した書物「吉田文庫」の数々もここに展示されている。サイン入りの本なども多く、有名どころだと志賀直哉のサイン入りの書籍などもあり、その交友関係が垣間見られる。
 もう1つ有名なのは「脱出はしご」の存在。当時はガレージに繋がっていたそうだが今回の再建ではそこまで再現しているわけではないのでその雰囲気だけ味わってもらいたい。
 北側には舟形の風呂が再現されている。設計には大磯の船大工が関わったと言われているこの浴槽、今回は再現されていないがトイレと洗面台も同じ場所にあり、またシャワーヘッドが浴槽の中を向いているところから洋風のユニットバスになっていたようだ。海外生活の長かった吉田茂ならではの“和洋折衷”と言えるだろう。
 部屋の襖の取っ手に注目すると一風変わった意匠が施されている。これは「月」の字をかたどったもの。部屋全体が「雪月花」をコンセプトにしたと考えられており、欄間の部分が「雪」のイメージ、襖には「月」、さらに床の間に「花」を飾り、部屋全体で「雪月花」というわけだ。襖には桐紋が描かれているのだが、吉田家の家紋は桜紋とされており食い違いがある。もっとも桐紋は政府の紋としても使われているので吉田茂に馴染みもあるだろうが、私邸にまでそのデザインを入れた理由は不明。なにぶん私的な空間なので情報や写真も少ない。ぜひ実際に部屋に足を踏み入れて、推察してほしい。