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バニューシネマパラダイス:シーン81『ライオン 25年目のただいま』

映画0414
『ライオン 25年目のただいま』(2016/オーストラリア)
監督:ガース・デイヴィス 脚本:ルーク・デイヴィス 
出演:デヴ・パテル/ニコール・キッドマン/サニー・パワール 他
109シネマズ湘南他、全国にて公開中。
 ほんの一瞬、目を離した隙に、2歳児の息子が見当たらなくなった。妻や父母を交えて必死で探し回った挙句、家の前の曲がり角から帰って来る息子を見つけた。笑い事では済まされない。二度と目を離すまいと固く心に誓いながら「どこに行こうとしたの?」と息子に聞くと、「お花見」と呑気な答えが返ってきた。2歳児の行動範囲は、大人が思う以上に広い。本作の主人公サルーは、たった5歳でインドの見知らぬ土地で迷子になってしまう。住んでいた町の名も、母親の名前すら知らない(普通、親を名前で呼ぶことはない)彼は、幾度もの窮地を経て、遠くオーストラリアの地で養子として成長する。やがて25年が過ぎて、本当の家族と再会を果たす。子を持つ親としてはいたたまれない思いだが、不思議と悲壮感が漂わないのは、サルーの明朗さと聡明さ故だ。彼は愛くるしい笑顔で大人を魅了する一方、大人の悪意にも目敏い。これは実話である。こんな状況は滅多にないが、子はいずれ親元から巣立っていく。サルーのような生命力は、我が子にも身につけていてほしい。どんな場所でも生き抜くために。

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文とイラスト:竹内清人
1968年生まれ。映画宣伝を経て、『戦国自衛隊1549』で脚本家デビュー。現在、平塚の片隅(馬入あたり)で執筆活動をつづけている。オリジナル小説『躍る六悪人』全国書店にて絶賛発売中!